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ベスビオのアグリトゥリズモ

次の日の朝。お腹の調子もなんとか良くなり・・・
車でベスビオを少し登り、目的地へ。

ベスビオは標高1281mほどの火山で、
ベスビオ・トマトはその下限の150m〜400mくらいまでの土地で栽培されます。
実際夫の実家が標高400mくらいのところにあり、
昼は日があたって暖かいけれど夜はかなり冷え込みます。
この寒暖の差はトマトにも良い、といわれるけど、
海に面して暖かいナポリ都市部と比べると少し住みにくい。


さて、本当に手作りをしているところを探して
いくつか訪問地をピックアップしてみたけれど、
電話が通じないところも多く、直接訪ねていったら

「その仕事はもうやってない」

とか

「自宅用に作っているだけだからうちで食べてく?」

だとか、あらためてベスビオのトマトというのは、
少量生産で自家消費用に作られているということを実感してきました。


それにナポリ、特に郊外の小さな街ではまだまだネットビジネス、
どころかパソコンがない家だって多い。
私はたいていのお店の住所をネットで探していたのだけれど、
自分の店舗がネットにのっていることさえ知らない人もいて、

「そういえば昔誰かが来て何か質問に答えたような・・・」

ということも。

私たちからしてみれば
「希少な品種を育て」
「昔からの伝統を守って」
いる生産者だと大げさにとらえて崇める傾向があるけれど、
本人達は昔から同じことを繰り返しているだけ、
といたって普通の顔をしているので、
最初のうちは
「どんなにすごいことをしているんだ」
と張り切って乗り込んでいった私の方が空回りしていたこともよくありました。

ネットと、その人たちの生活にあまりに隔たりがあって、
これはなかなか調べきれないぞと思っていた時、
一件のアグリトゥリズモに行き当たりました。
ベスビオのアグリトゥリズモ_c0220786_6561526.jpg

これは。

作業所のお兄ちゃんが、キッチンからおばあちゃんを呼んできてくれました。
名前はマリア。
私が作っているものについて説明を聞きたいというと、
次々と話し始めます。

「このトマト缶はね、トマトをつぶさないで丸ごと煮込んだの、
そうすると味がそのまま保たれておいしいから」

「このナスのオイル漬けはちゃんとオリーブオイルを使ってるのよ、
そういうちょっとしたことで全然味が違うのよ」

私が偉大だ、と言われるシェフに以前あったときも、
同じような場面があって、堅苦しい面接を言葉少なに終え、
なんだかこの人、気難しそうでここで働くの嫌だなぁと思っていたら、
厨房に入った途端、

「この機械知ってる?セモリナ粉からこれでパスタができるんだよ、
この機械すごい高いんだけどね、
オーナーに無理言って買ってもらってね、
ほらここに粉入れるとこっから出てきて、
あ、こっちにあるのがうちのレストランのメニューで、
そうそう、何か作りたいものある?
このチョコレート味見する?
厨房で働くとつい長時間労働になるけど今の目標は厨房で死を迎えないことだな・・・」

なんだかこの人と初対面だったっけ?
というところまで、しゃべるしゃべる。
とにかく作ることや、厨房にいることが好きで好きでたまらない人、
聞いていてこっちまでわくわくしてくる人。

このおばあちゃんもそんな感じ。


ベスビオのアグリトゥリズモ_c0220786_6571657.jpg天井いっぱいのトマト!!これがピエンノーロ!!!




トマト缶と、アプリコットジャムと自家製ワインを頂いて、
さっそく実家で味見。
ベスビオのアグリトゥリズモ_c0220786_6581837.jpg


ソースの味見の時点では、酸味が勝ってたのが、パスタと合わせると
パスタの持つ甘味でちょうどいいバランスになり、すごい。しっかりしてるんだなぁ。
ベスビオのアグリトゥリズモ_c0220786_745197.jpg

by chicca-blog | 2009-11-14 07:14 | イタリア料理・食材

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